うるとらんぷす

「チェルシー」という単語に対する反応が人より2.7倍速いチェルサポによる備忘録。

【BPL#15】"All We Want For Christmas Is..."~ニューカッスル v チェルシー~

チェルシーの無敗記録はいずれ必ず途絶える」

この発言元が誰なのかというと、実は今回アウェイに乗り込み対戦することとなった相手方の、ダンディヤクザことアラン・パーデュー。解任間近と言 われてからの炎のカムバックにより舌も饒舌になったようです。ということで今回のお相手はニューカッスルモウリーニョも苦手とするこのアウェイの地で勝 ち点を積み、パーデューの言葉を跳ね返すことができるのか。

 


両者スタメンはこちら。マティッチを累積サスペンション(※プレミアでは5枚のイエローカードで1試合のサスペンション)で欠くチェル シーは代わりにミケルを先発起用。対してニューカッスルは筆者お気に入りのコルバックをダブルボランチに据え、GKにはクルルではなく第2のエリオット を。それではキックオフ。





◯柔軟に変化したニューカッスルの中盤

はじめに、この試合をザックリと要約してしまうと「ニューカッスルの守備を前になかなか有効な攻撃を掴めないまま徐々にスクランブルの状 況に持ち込まれミスから失点したチェルシーが追いつこうと攻撃に比重をかけるも、カウンターから2点目を喰らい万事休す(ドログバパワーで1点返す)」と いうものだったのですが、今回はチェルシーの攻撃をほぼ90分間封じ込めたニューカッスルの守備を、特に中盤の構成に刮目し考察していこうと思います。


ニューカッスルは4-4-1-1のような形で、トップのペレスがファーストプレスとして機能。チーム全体は基本的に自陣にリトリートした 状態です。が、ドン引くわけではなく自陣のハーフコートの中に間隔よく選手を敷き詰めたようなイメージ。ボールの奪い方としては、縦にボールが入ったとこ ろを複数で囲んでいく形。囲んでも取れなかった(回避された)場合は全体のラインを下げてコンパクトにし、スペースを消します。

以上が基本となる守備のシステムかと思うのですが、注目したいのはダブルボランチのティオテ、コルバックにシソッコを加えた3人の守備時 の連携です。この3人がそれぞれ「前線までプレス」「バイタルのスペース潰し」「パスコースを限定」といった役割を上手く回しながら、状況に応じて立ち回 りを変えていました。
 


多くの場合はこのようにペレスがボースホルダーにプレスをかけ、トップ下のシソッコがそのパスコース(この場合ミケル)を潰し、コースを限定させるパターンを使用していました。
 


続いてコルバックが前線まであがっているパターン。ペレスと並んでプレッシャーをかけているのが分かります。ここで重要なのがしっかりと シソッコが、コルバックの上がったスペースを埋める作業をしているということ。この中盤での柔軟さが特に前半のニューカッスルは目立ちました。ちなみに中 盤3人の連携ということで書いていますが、ティオテは滅多な事態が起こらない限りはアンカーとして常にバイタルをケアしていました。

実際にこのニューカッスルの守備システムは機能し、シソッコが2度ほど「前線で引っ掛けてそのままカウンター」という形を成功させていま す。この試合、シソッコの存在は本当に厄介で、中盤での制圧バトルでもフィジカル多用するわ前線でボール収めるわアメオビの補助でサイドに流れるわで、 チェルシーディフェンダー陣は相当手を焼いていた印象です。



 モウリーニョの打った手は?

さて、中盤の制し合いをあっさりと譲ってしまったチェルシー。このままだとセスクを前線に上げてもバイタル渋滞により埋もれてしまう、ど ころかネガトラという弱点を突かれむしろカウンターのリスクを高めてしまうことになるわけですが、モウリーニョはどうこの事態に手を打ったのでしょうか。

これはピッチ上で確認できたというだけで、モウリーニョの指示だったのか、はたまた選手個人のアイディアによるものなのかは判断しかねます。ということだけ前もって言っておきます。

中継でも粕谷んが言っていましたが、この試合はいつにも増して(特に前半)オスカーが落ちてボールを触る機会が多かったように見えました。これは恐らく中盤の制し合いがニューカッスルにあると見て、中盤で埋もれてしまうオスカーをビルドアップ補助に充てたのかなと。
 


そして中央での突破は極力避け、サイド、もっと言えば大外を意識した攻撃をさせたかったのかなと思いました。この「オスカーから大外へと 展開する動き」は思惑通り、大外に開いたクエ太へのロングフィードという形で実現しています(得点には繋がりませんでしたが)。また、左だけではなく右サ イドにおいても、上の画像のように「ウィリアンの大外からの中央への切り込み」という狙いは幾度か嵌っています。



それでもなかなか得点をこじ開けることは出来ず。シュートの場面は作れていただけにゴールがゼロというのは、少しアンラッキーかそれとも シュート練習不足か。「ニューカッスルの練ってきた守備システムに対し"正解"の範疇と言える手を打ったチェルシー、得点には至らず」といった感じで前半 を終えます。





後半になるとニューカッスルは気持ち繋ぐ意識を持って攻撃を組み立てるも、基本的な守備システムは変えず。中盤は上記にあるように囲み守 備で対応していきますが、コスタにはスティーブン・テイラーorコロッチーニが完全マンマークで、責任を持ってバイタルだろうが追尾していく指示がされて いたと思います。

時が経過するにつれて攻守分断化が進んでいくと、試合はスクランブル状態に。パーデューが待ち望んだ展開かと。案の定中盤からのボールロ ストでサイドに流されると、サイドからのクロスをケーヒルがクリアしきれず、BOX内のシセがこれを合わせて失点。セント・ジェームズパークが沸きます。

ケーヒルに関して言うと、実況・解説でたまに褒められることがよくあるんですが、個人的には今季に限れば昨季の6割程度しか出来てないん じゃないかという意見を持っています。イージーなパスミスであったり、裏を取られやすかったり、勿論ケーヒルは特に集中的に試合に出ているので疲労の蓄積 というのもひとつの原因ではあると思うのですが。ピッチに立った以上は疲労なんて言ってられませんよね。

失点により、スタジアム全体に「無敗を止めるにはここしかねえぞ!!!」という殺気が立ち込めるなか、モウリーニョはオスカーに代えてシュールレという刺激薬を前線に投入。その6分後にはルイス、ドログバを立て続けにピッチに送り出し、あとは逆転を待つのみ。

ルイスのパス精度を中心に攻撃を組み立てていくチェルシーですが、放り込めど放り込めど跳ね返されていくボールたち。セカンドボールだけは奪われまいとミケルが頑張ります。

ここで非常に嫌らしい守りをしていたのが、コルバック。時間と手間をかけずに前線にボールを運びたい状況の中で、最終ラインおよびセスク がボールを持ったときにことごとくパスコースを潰し、判断を鈍らせていました。あのプレーには「ポジションの嫌らしさ・オブ・ザ・シーズン」を早くも贈り たいレベル。

必死でセカンドボールを拾ってきたチェルシーでしたが、前がかりになったところをカウンターを喰らい、2点目を献上。ケーヒルがいとも簡単にマークを外され裏を取られました。そして蘇るパピス・シセというチェルシーキラー。

その後スティーブン・テイラーが2枚目のイエローで退場、加えてドログバのヘッダーで1点を返すも、パーデュー曰く「モウリーニョ・タイム」となった6分のアディショナルタイムで同点弾はうまれず。今季初黒星を喫したチェルシーでした。




FT:ニューカッスル 2-1 チェルシー|Cisse(57', 78') / Drogba(83'')

ついにやってきた黒星。悔しくも戦前のパーデューの言葉が彼らによって実現してしまった試合。ただ、多くの方も仰ってましたが、これで無 敗優勝というひとつのプレッシャーから開放されたと考えるしかないですね。この試合はニューカッスルの守備もよく統制されていましたし、コスタのコンディ ションも今いちだったので、特に不運な試合とも思いませんし。そんなに簡単に無敗優勝させてくれるほど、甘いリーグでやってないということを痛感した試合 でした。というより、依然リーグ首位にいるのに無敗が途絶えただけで嘆けるのも贅沢なものか。