うるとらんぷす

「チェルシー」という単語に対する反応が人より2.7倍速いチェルサポによる備忘録。

【BPL#33】"Edge Closer"~チェルシー v マンチェスター・ユナイテッド~

サムネイル


 今季リーグ戦でこれまで起用した選手の数、なんとわずかに22人(※リーグ最少)。ローテーションの頻度が下が れば、当然選手ひとりあたりの稼働率は上がるわけです。CL敗退という精神的ダメージも相まって、ここ数試合ガクっと調子を落としているチェルシー。それ でも、「勝負強さ」という目に見えない強さをもって勝ち点を拾ってきたあたりは流石モウリーニョといったところでしょうか。

 
 今節ホームに迎えるは、チェルシーと対照的にここ数試合調子をあげてきたユナイテッド(そもそ もこの2チームは従来から前者:先行逃げ切り型 / 後者:後半追い込み型というリーグの戦い方をしているけど)。優勝を目前にしていたとて、ここで土を付けられると気持ちよくトロフィーを掲げられないよう な気がしてしまうのはきっと、選手もサポもモウリーニョも同じ。

  スタメン


 両者のスタメンはこちら。現地ではフェライニがアンカーの4-1-4-1という表記がされていました が、実際はフェライニファルカオの2トップを前に置いた4-4-2でした。対するチェルシーは、戦前の予想通りフェライニ対策としてズマというマンマー カーを派遣。トップにはコスタがハムの怪我で離脱&レミー間に合わずということで、ドログバを起用。それでは、キックオフ。



―――――
 
 こ の試合の主な構図は、「ボールを持つユナイテッド」vs「ボールを持たせるチェルシー」というものでした。先に結果を言ってしまえば、モウリーニョの書い たシナリオ通り、カウンター(orセットプレーの可能性もあった)から得点をあげ、ウノゼロで勝ちきった試合だったわけですが、ただ単にボールを持たせた わけではなく、「相手の良さを消しつつ」持たせるというコンセプトがこのシナリオを書いた作家の心の中にはあったんじゃないかと。
 
 この試合に限らず基本的に、モウリーニョは所謂ビッグマッチにおいては「相手の長所を消すこ と」をまず何よりも優先します。これはキャラガーとギャリー・ネヴィルも戦前から口を合わせて言っていたことですが。普通なら「ホームでするような戦い方 じゃないだろう」と思えるような戦い方も一切気にせずやっちゃうんです。どこかの薄い青いチームみたく、バルサ相手に堂々と胸と胸をつき合わせて結果殴ら れる みたいなことはしないわけです。
 
 -ユナイテッドの長所とは?

  相手の長所を消すには、まずその長所を知っている必要があります。ユナイテッドが好調のキッカケを掴んだのは、ブリントの左SB起用をし、フェライニを前 線に上げ始めてからだと記憶しています。まずは「サイドバックに起点をつくれること」と「前線に絶対的なターゲットマンがいること」が長所。加えて、後方 からのキャリックのボール捌き、エレーラ&マタというスパニッシュコンビによる教科書通りのパス・アンド・ゴーやライン間への侵入(巷ではこれを「エント レリアネス」と呼ぶみたい)も、ユナイテッドの長所であり、ここ数試合の好調を支える大きな要素です。このユナイテッドの長所を消すことがまず求められた わけですが、ブリント、キャリックは負傷により欠場が決まっていたので、大きく分けて①フェライニという前線のターゲット / ②マタ&エレーラのライン間への侵入 この2つの長所を消すというのがミッションだったのかなと。ブリントとキャリックの欠場は実際、かなりの追い風でし た。2人がいればまた別の表情をした試合が見れたのかも。
 



〇歯には歯を

 1つ目の長所であるフェライニを試合から消すべくモウリーニョが白羽の矢 を立てたのはズマ。シティとのマンチェスター・ダービーでも空に陸に絶対的なターゲットマンとしてボールを収めチームに大きく貢献したこの大男を止めるべ く、ズマには(ほぼ)マンマークで守備をさせます。ダービーでも「ユナイテッドの秘密兵器であるデ・ヘアのフィードをフェライニに競らせる」という手法が なされていましたが、空中戦では脅威のジャンプ力でフェライニに何度か普通に勝ってしまったズマ。この子の滞空時間ほんとどうなってるんだか...

  空ではほとんど仕事をさせなかったものの、陸では何度かフェライニを見失う場面があったように思います。恐らくモウリーニョはこの試合を「10人 vs 10人」のゲームにしようと企んだのだと思いますが、COC決勝のエリクセン番をした時に続き、マークとポジショニングはまだ改善の余地あり、という印象 でした。ただ、まだ若いのでこれだけやれれば上出来という気も。



〇ユナイテッドのボトムチェンジ


ボトムチェンジ

  2つ目の長所であるエレーラとマタのライン間の侵入に対して、モウリーニョはプレスによってユナイテッドの最終ラインがボトムチェンジ(中盤の選手が降り て3バックをつくることでプレスの基準点をずらすシステム)をするように仕向けました。これにより、エレーラとユナイテッドの前線に乖離が生じ、エレーラ の攻撃参加の機会は限られます。

 ただ、ドログバはフリックや落としといったダイレクトなプレーでは力を見せるものの、やはりスペースに 走ったりインテンシティ溢れるプレスをしたりというのはキツいので、エレーラは最終ラインのポゼッションをCBとプレミアで最も足下のあるGKデ・ヘアに 任せて、自分は中盤に飛び込んでいくという判断をしても良かったんじゃないかと個人的には思います。きっとリスクを考えて最終ラインのポゼッションに参加 したんだろうけど、そのエレーラ本人のパスミスからピンチを招いていたのは、なんとも悲しい現実でした(チェルシーからしたら儲けなんだけど)。


エレーラあげる



〇セスクの守備マネージメント

 フェライニにズマをあて、ボールを持たせボトムチェンジを誘発させることでユナイテッドの長所を消したチェルシーでしたが、バイタルの守備分担が少し曖昧だったのかなという節がありました。


セスク

ズ マはフェライニ番で良いとして、ユナイテッドがサイドでボールを持ったときに、マティッチが最終ラインに吸収されてしまうことが多すぎたのかなと。これに 呼応してセスクがバイタルを潰してくれるような選手であれば良いのですが、そこはネガトラに難を抱える男セスク。また特に立ち上がりにおいて、ドログバと 一緒になって前線にプレッシャーをかけにいくのか、それとも一歩さがって4-1-4-1のような守備ブロックをつくるのか、かなり曖昧なポジションをして いた印象です。これによってユナイテッドのCBに何度かドリブルで運ばれています。







これは右SHのオスカーとの連携不足でもあるので一概にセスクの問題とも言えませんが、トップ下だと守備範囲が広いうえに上下のシャトル的な動きが求められることを考えると、やはりボランチでセスクを起用する方が全体の守備バランスとしては保てるのかなと。




'20 - 後方と前線とをつなぐ動きが少なく苦しむユナイテッド。ルーニーファルカオが意識的にボールを貰いはじめる

'28 - ファルカオが中盤まで降りてきて中継としてのプレーを見せる。JTは背後につく

'38 - スモーリングが中盤まで降りてきたファルカオに楔のパス。ファルカオについていたJTがタックルでボールを奪取し、そこからショートカウンター発動。オスカーのヒールパスから最後はアザールが決めて先制。

――――― 後半 ―――――

'56 - エレーラのパスミスからチャンスをつくるもアザールのシュートはポスト直撃

オスカー、前半のアシストから急激に動きがよくなる。前にもゴールしてから人が変わったように元気になった試合があったような...

'67 - オスカー⇒ラミレス / ラミレスを投入し運動量とカバー範囲を強化。
'69 - ヤング⇒ディ・マリア / ヤングにほとんど仕事をさせなかったイヴァノ、見事でした。

'69 - マタ⇒ヤヌザイ / このクラブに多くの喜びと感動を与えてくれたマタに対し、ブリッジから大きな拍手。なぜか代わって入ったヤヌザイにはブーイング(なんか彼したっけ?)。

'80 - ショウ⇒ブラケット / 後ろからのフィードを期待してかブラケットを投入するも、特にインパクトは残せず。あとショウ君はもう少し痩せような。


FT:チェルシー 1-0 マンチェスター・ユナイテッド|Hazard(38')

苦 しい上り坂を一歩一歩踏みしめながら登っているような感覚のシーズン終盤。やはりこういうビッグゲームで守りに徹した時のチェルシーは半端じゃないなとい うことを、誇らしげに感じた試合でした。英国メディアはすでに「史上最も魅力を感じないチャンピオンだ」とか何とか言っていますが、たぶんその言葉、チェ ルシー関係者からしたら大好物だよと言ってやりたいそんな気持ち。次はアウェイでアーセナル。"その"瞬間まで気を緩めずに。