うるとらんぷす

「チェルシー」という単語に対する反応が人より2.7倍速いチェルサポによる備忘録。

【BPL#20】"A Disaster Caused By A Hurricane"~トッテナム v チェルシー~

 

あけましておめでとうございます。2015年記念すべき最初の試合となったスパーズ戦。年明けからいきなりロンドンダービーをあててくるこの 感じ、FAも分かってますねほんと。さてスパーズは今季ここまでの成績と言えばまずまずといったところ。ただ筆者個人的には凄く良いフットボールをするな という印象を開幕当初から受けています。ただ超がつくほど真面目なフットボールという印象。何シーズンか前までの何しでかすか分からない感(良い意味でも 悪い意味でも)は薄れているなあと。このままポチェッティーノが育てていけば2、3年後にはかなり良いチームに仕上がっているのでは。

 


両者のスタメンはこちら。ホームのスパーズは2列目に右からタウンゼント、エリクセン、チャドリという配置。そしてトップには今季ブレイ ク中のハリー・ケイン。チェルシーはいつもながらのメンバーで特筆すべきことは特に無いんですが、強いて言えばベンチにルイスもシュールレもおらず代わり にサラーがいるということ。何故こうなったのか。それではキックオフ。



◯フリーラン要員をつくろう

はじめにスパーズの守備システムをば。全体のラインはかなり高めに設定されており、最終ラインがハーフライン付近まで来ているような状 態。プレスは前から人数をかけて行い、ケインに加えてトップ下のエリクセン、そしてボランチのメイソンまでもがプレス隊に加わっていました。このメイソン は前回ホームでスパーズと対戦した時にも書いたのですが、プレーエリアが非常に広範囲です。ボランチでありながら前までプレスにも行くし、BOX侵入まで します。

そしてスパーズの攻撃において気になったのが「フリーラン要員のつくりかた」。
 

 
このように逆サイドのSHを反対サイドまでシフトさせることで局地的に数的優位をつくりだします。これは左右両サイドでもれなく実行されていま した(逆サイドの場合はチャドリが反対サイドまで動く)。この選手の動かし方は今季チェルシーも導入しており、どうやら欧州でもチーム戦術として採用して いるチームは少なくないそうです。

このシステマチックな動きを2列目に与えたことで、ポチェッティーノは確実に「1人が余る」という状況をつくりました。これによってその 余った選手がフリーラン要員としてスペースに動き、時には裏を取る役割、また時にはフリーランによってチェルシーの守備ブロックを動かすorDFを釣ると いった働きをしていました。



対してチェルシーはスパーズの高い守備ラインを考慮し、再三に渡ってセスクからコスタへの裏抜けのパスを出します。ただコスタが裏抜けに 成功しても周りが押し上げきれずコスタが孤立してしまう場面が目立ちました。相手も徐々に「裏抜けするのはコスタのみ」という事実に気づいていたよう。も う少し裏抜けする動きを複数の人数かけて行えれば、スパーズの最終ラインにもっと負荷をかけることができたかも。

トランジションが高い頻度で繰り返されるオープンな試合の中で先制をモノにしたのはチェルシー。クルトワのピッチ横断スローから一気にカ ウンターを発動させ、アザールの突破&シュートから最後に詰めたのはコスタ。少ないチャンスをカウンターから仕留めることに成功しました。

先制のあとは暫くの間主導権はチェルシーに。変わらず裏への狙いを続けながら、コスタは左サイドに流れて起点をつくるような動きを意識していました。追加点のチャンスも何度かつくりだしただけに、この中の1つでも得点に繋がっていれば…と悔やまれる夢の追加点。



エリクセンとマティッチ

この試合、特に前半は存在感があまりなく終始消えているように見えたエリクセン。しかし、それこそが彼の狙いだったのではないでしょうか。

上述したようにスパーズはフリーとなる選手をつくり、その選手がフリーランをすることでチェルシーの守備を攻略せんとしていました。そし て特にこのエリクセンがフリーとなり、マティッチと抱き合わせのような形で「マティッチの守備力のベクトルを変える」という役割を果たしていました。

 -スパーズの同点弾からみる「マティッチの守備の逃がしかた」。

分かりやすいように、ケインによるスパーズの同点弾を通して見ていきたいと思います。もちろんこのゴールはケインの個の力が光ったゴールでもあるのですが、その前の段階として「マティッチのプレスが外された」という事実があります。

前述した「マティッチの守備力のベクトルを変える」という表現ですが、どういうことかと言うと「マティッチに守備はさせるけど、そもそもその守備の方向性をこちらでコントロールしてしまえばいい」ということです。そのコントロールに一役買ったのがエリクセン

エリクセンはこの試合を通して、多くの時間マティッチのそばでポジション取りをする姿が確認できました。恐らくポチェッティーノ監督はマ ティッチにエリクセンというマンツーマンをあてることで、「マティッチの守備力をエリクセンに集めた」のだと推測します。なので、エリクセンが消えていた のはある意味でスパーズにとってみれば正解だと言えます。

なぜマティッチのマンツーにエリクセンが選ばれたのか。試合を見るとすぐに分かりますが、エリクセンは自分の足元に来たボールをファース トタッチで処理する能力が半端じゃないです。とんでもなく高いです。なので基本的に消えていても、ファーストタッチやトラップで守備を外せるという強みが あります。ケーヒルがPKを献上したシーンでも、その前にエリクセンの見事なファーストタッチが絡んでいます。



ケインの同点弾からたて続けに2点を奪われ前半で早くも1-3とされたチェルシー。ケインのゴールが強烈すぎたか、失点から過剰にケインを気にしすぎて、ますますフリーランを許していた印象。

後半からモウリーニョはオスカーに代えてラミレスを投入。ただそのラミレスは視野が狭く周りが見えていないようなプレーばかり。また細かいところで生きるようなタイプでもないので中盤の混み合ったところだと更にボールロストが増えていました。

トランジションの激しい中でディレイという概念がないのか、マティッチもイヴァノも簡単に振り切られ後ろを取られる事故が多発。アウェイの雰囲気もあってか焦りを隠せません。

するとイヴァノがガンガンプレスを振り切られ、右サイドの裏を取られたところからこの試合旋風を巻き起こしたハリー・ケインが2点目をGET。

4-1となり、もはや失うものはないと前線からのプレスを強めていくチェルシー。特にクエ太が頑張って走っていました。

61分にはファシオの自陣でのボールロストからアザールとセスクのワンツーでゴール。これで2-4とします。

それでもホワイト・ハート・レーンを再び盛り上げるチャドリのゴールでスコアは2-5に。スパーズサポからは"We Want Six!(=6点目はまだか!)"というチャントを歌われる屈辱。

セットプレーのリスタートからキャプテンが1点を奪うも、反撃はここまで。新年早々苦い思い出となってしまいました。


FT:トッテナム 5-3 チェルシー|Kane(31', 52'), Rose(44'), Townsend(45'+4 *pen), Chadli(78') / Costa(18'), Hazard(61'), JT(87')

2015年は苦杯を舐めさせられるスタートとなってしまいました。ここまでマティッチの守備力に助けられてきただけに、その強みをうまい こと利用されてしまったかなと。あとは単純にスパーズの2列目もうまかったです。ちなみに試合中ケインの背中を蹴ったケーヒルに対してのお咎めは無しと発 表されました。ケーヒルは猛省するように。カップ戦も挟むので、もう一度この辺りでリフレッシュして切り替えて欲しいですね。首位の理由が「アルファベッ ト順でシティより早いから」なんてかっこわるいぞ。