うるとらんぷす

「チェルシー」という単語に対する反応が人より2.7倍速いチェルサポによる備忘録。

【BPL】"MISSON COMPLETED"~エティハド撃破の裏に隠れたモウリーニョの真骨頂~

 
リーグ戦の大一番。

シティ戦に向けたチェルシーのスタメンは、相当消極的なものであった。
試合前「このメンバー選出は、ゴール前にバスを停めることを意味するのか」との質問に、モウリーニョはこう答えた。

「バスを停めるか否かをスタメンで決めて欲しくないね。それはチームの戦い方によって決まる。6、7、8人の守備的な選手を送り出し攻撃的なプレーをすることだって出来るんだよ」

レギュラー格のオスカーを差し置いてダビド・ルイス、ネマニャ・マティッチ、そしてラミレスを中盤に据えたチェルシーは、クリスマス直前のエミ レーツで行われたアーセナル戦のスコアレスドローを繰り返すものかと思われた。しかしそんな予想に反し、チェルシーはより冒険的なフットボールを展開して みせた。

怪我のフェルナンジーニョに代わってデミチェリスボランチ代行を務めたことは、モウリーニョのウィリアンの中央での起用を後押ししたかもしれないが、どちらにせよモウリーニョの策略は見事なまでに上手く進んだ。

チェルシーの守備にはいくつか特徴的な戦術があった。

1.ルイス、マティッチ、ラミレスのトリオは強固な盾を作り上げ、シルバを無効化した。
アグエロ、ナスリ、フェルナンジーニョを欠いたシティは、結果としていつもより余計に創造性といった面でこのスペイン人1人に頼ることになってしまった。そのスペイン人もスペースを見つけ出すことに翻弄し、得意のスルーパスも鳴りを潜めた。
シルバの攻撃力を削ることに成功したチェルシーは、3年間以上に及びエティハドに訪れたチームが成し得なかったクリーンシートを達成してみせた。


2.この試合、両者の主な攻撃は対面するサイドから組み立てられた。
シルバが中央に向かって動き、ラミレスも本来の中央での守備位置を取ったことで、両チームのサイドバックにスペースが与えられた。

キックオフ後最初に訪れたビッグチャンスは、コラロフが果敢に攻め上がり、そのコラロフの危険なクロスをファーサイドヤヤ・トゥレが合わせ損ねた、あの場面である。
そしてもうひとつシティに訪れた決定機として挙げられるのが、後半またもコラロフからのクロス、シルバに渡ったシーン。

コラロフのオーバーラップはシティにとって攻撃の武器となったが、この試合それ以上に存在感を見せたのは、コラロフと同じくセルビア出身のサイドバック、イヴァノビッチである。
シルバが中央に動くほど、イヴァノビッチは前へ前へと出て行くことが許された。たとえシティがサイドを崩したとしても、いざとなればルイスとマティッチのどちらかが即座にカバーをすることが徹底されていた。

イヴァノビッチの積極果敢な姿勢は先制点が生まれる前からも見られた。
だが、おそらくモウリーニョはこの右サイドバックに得点までは期待していなかっただろう-まさか左足でボックスの外から華麗なハーフボレーを叩き込むとは-とにもかくにも、イヴァノビッチが自由に動き回ることを許されたことはこの試合で決定的なものであった。

イヴァノビッチのパフォーマンスは今日のチェルシーを象徴した。
守備において堅固、さらに攻撃でも脅威。ルイスとマティッチは守備的な役割を任されたが、後者は後半にポストを叩くミドルを放つなど、攻撃でも多いに貢献した。そしてラミレスもカウンターの核として機能し、チェルシー最初の決定機を演出した。

守備の選手が攻撃において貢献し、攻撃の選手がプレスで守備を助けたパフォーマンスは、今季のチェルシーが基盤とするところである。

ウィリアンの無尽蔵のエネルギーは中盤を制圧し、アザールタッチラインにおける積極的な走りはアディショナルタイムにチームを助けた。

この試合でチェルシーが用意してきた戦術は、守備的な選手を送り出してドッシリと深く守る、いかにもモウリーニョらしい戦術のように思えた。だ が、今日のチェルシーはそんな試合前の予想を裏切り、オープンな戦い方をしてきた。おそらく、マヌエル・ペジェグリーニを含むこの試合を観ていた多くの者 が「一本取られた」と思ったに違いにない。ビッグマッチにおけるモウリーニョの強かさは、健在である。