うるとらんぷす

「チェルシー」という単語に対する反応が人より2.7倍速いチェルサポによる備忘録。

【CL#8】"Knowing Where We're"〜チェルシー v PSG〜

 
 

ファーストレグをアウェイながら1-1で終え、ホームの地ロンドンへと戻ってきたチェルシー。手にしたアウェイゴールというアドバンテージをどう活かせる か。戦前から両監督のメディアを介した間接的な舌戦が繰り広げられるなど、CLらしい緊張感。特にブランからは、昨季スタンフォード・ブリッジで巻き起 こった終盤の劇的な敗戦を払拭するには同じ場所で違う結果を手にするほかないといった気概が感じられました。

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両者のスタメンはこちら。チェルシーはリーグでサスペンションを喰らっていたマティッチが戦線復帰。右SHには西ハム戦に続いてラミレスを起用。対する PSGは、右SBにマルキーニョスを置き、ファーストレグでアンカーを担ったルイスはCBに。右WGにはパストーレを置いた布陣。それでは、キックオフ。



モウリーニョの先手を打ったブランの守備システム

 PSGの立場になって考えてみると、ここはスタンフォード・ブリッジ。セカンドレグがアウェイゲームというのは、一般的に見れば不利な 立場。でありながら、この試合の主導権は31分にイブラヒモビッチが退場するまでPSG側にありました。つまり、チェルシーの立場からするとうまくいって なかったのです。その「うまくいってなかった」要因は選手のコンディション調整失敗やCLの舞台という外的プレッシャーなども考えられますが、やはり大き な要因は攻撃が機能しなかったことだろうと。

 今季チェルシーの攻撃で中心核となっているのがアザールであることは今さら言及するまでもありません。その類まれなるドリブルの能力に 加え、相手DFを背にしながらもボールを失わない(失うときはほとんどの確立でファールを受けたとき)キープ力を備えるアザールは、モウリーニョのもと周 囲の状況を把握しながらプレーすることができるまでに成長。それは相手DFに囲まれながらもサイドチェンンジをしたり、味方選手を使う側になりスルーパス を通すようなプレーからも感じ取ることができます。 最近のトレンドスタイルとして確立されつつある「他ポジションの選手を同一サイドに集め局所的な数的 優位をつくる」スタイルはチェルシーにおいてももれなく採用されており、エースであるアザールの位置する左サイドでこの動きがなされています。

 チェルシーの定番化された攻撃システムに対してブランは 

 このチェルシーの攻撃システムに対して、ブランはまず右SBに運動能力のずば抜けたマルキーニョスを置きアザールと対峙させるという手 を打ちました。しかし、アザールのサイドには例によってコスタやセスクが集まってきます。これによって数的優位をつくりだし、ボールロストからの即座なプ レスを可能にするため。そこでブランは中盤三角形の一角、ヴェラッティにワイド守備というタスクを与え、チェルシーの定番化された「左攻略」に蓋をするこ とに成功。

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 チェルシーが使いたかったスペース

 この試合でチェルシーが意図した攻撃の形とは恐らく、コスタを左サイドに流して何人かの相手DFを釣り、本命は両SHのアザール&ラミレスを中央に寄せたバイタル侵入だったのかなと。その形が成功(しかけた)のが以下の場面。



  がぞう


 確認した限りでは、このバイタル侵入が成功した(ボールが入ったことを成功とするならば)のは2回だけ。それほど、中盤と最終ラインの間のスペースを消すことにPSGは集中していたようでした。


'31 - オスカーとイブラヒモビッチルーズボールを競る形で接触。このプレーでイブラヒモビッチに一発退場の判定。これは確実にイエローのプレーでした。現にそ の後、前半が終了するまで試合は一種の混乱状態になっていましたし、試合に与えた影響を考えてもレッド判定はお粗末だったのかなと。



アザールのドリブルテク

 ここで横道に逸れ、アザールが試合中に見せたドリブルテクを紹介。アザールが相手DFを背にしたときのキープの上手さは前述した通りですが、これは頑張れば真似できそう。刮目すべくは、ボールを隠すことと、時間差での体重移動かと。




――――― 後半 ―――――

 
イブラヒモビッチを欠き10人になったPSGは、4-4-1の陣形にチェ ンジ。ヴェラッティとモッタの中盤センターに、左SHはマテュイディチェルシーはオスカーに代えてウィリアンを投入。ラミレスがボランチに下がり、セス クが1列前に出たような形。ただ、ほとんどの時間帯において、相手が10人ということもありボールを保持できていた(効果的とはいえない)チェルシーはマ ティッチアンカーの4-1-4-1のような状態になっていました。

'56 - 守備ブロックをしっかりと固めカウンターを狙っていたPSGは、ヴェラッティが中盤をスルリと抜けると、モッタが裏に抜け出したカバーニにスルーパス。ク ルトワと1 on 1になったカバーニはシュートフェイントでクルトワをかわすも、その後のシュートはポストをかすめゴールならず。ライン乱れのケーヒルと、カバーニを見 失ったラミレス。

 この辺りの時間帯は「ボールを持てど効果的に攻められないチェルシー」「テンメンになったことで狙いが一本化され、どっしりと構えなが らカウンターの機を伺うPSG」という構図が見事にできあがっていたかなと。アザールとウィリアンのサイドをスイッチさせたりと突破の糸口を模索していた ものの、チャンスというチャンスはつくれず。PCの画面越しに見てる身でさえも1人多い実感はさらさらなかったので、戦う選手たちもきっとそうだったので しょう。PSGの中盤のクオリティをまざまざを見せつけられる始末。
'81 - なかなかオープンプレーでチャンスをつくれない中で、ゴールに結びついたのはセットプレー。コーナーの流れからケーヒルがハーフボレーを決め、先制に成功。このまま逃げ切れば勝ち抜け。
'83 - 逃げ切り態勢に入るモウリーニョは、マティッチに代えてズマを投入。今思えば、上背のあるマティッチよりもコーナーのときにニアでふらふらしているラミレスとかラミレスを替えればよかったんじゃないかと。後の祭り。

'86 - コーナーからルイスにヘッダーを沈められ、失点。これで合計スコアは両レグともに1-1の完全イーブンに。そして、延長戦突入。


――――― 延長 ―――――

 延長キックオフからラミレスに代えてドログバがピッチに。この交代を延長が入る前にしたかったというのが正直なところ。それでも、ポストプレーの上手さでは流石のものを見せたドログバ。コスタもこのくらいポストしてくれるようになってくれるといいなあと。

'96 - BOX内でズマと空中戦で競り合ったチアゴ・シウバがハンドをし、チェルシーにPK。これをアザールがコロコロし、勝ち越し。ただアウェイゴールの関係でPSGは1点さえ取れば勝ち抜け可能という状況に。

'114 - 起きてはいけないことが起きてしまった114分。コーナーからファーのチアゴ・シウバが頭で合わせ、無情にもこれがクルトワを越えてゴール。CLというトップレベルの試合において、コーナーから2失点という失態。


FT:チェルシー(1)2 - 2(1)PSG|Cahill(81'), Hazard(96') / D.Luiz(86'), Thiago Silva(114')
PSGのクオリティは当然分かっていたし戦術面においてもブランは優れていたものの、ルイスとのマッチアップで見事ノセられてしまったコスタなど、細かい ところでの駆け引きでも相手が1枚上手であったことを認めざるを得ない試合でした。またそれ以上に、どこか気持ちが空回りしセットプレーで2失点する、そ もそも先制したのに追いつかれるという不甲斐ない結果となってしまいました。これで尚更にリーグ制覇は絶対のミッションに。次戦はホーム、セインツ戦。