~BTSport|戦友と交わすことば~
BTSportがリオとドログバの対談企画をやってくれていました。基本的にはリオが聞き手としてドログバに色々喋らせている感じなんですが、内容が結構おもしろかったので日本語におこしました。動画はこちら。
※削除されている可能性もあるのでそこはあしからず
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リオ(以下:R) ― ディディエ、まずはプレミアリーグ優勝おめでとう。どう感じてる?
R ― シーズンを振り返ってみて、特徴的だったのはどんな瞬間だった?
D 「個人的には最初の試合かな。帰還後初めてピッチに入ったときのスタンフォード・ブリッジの歓迎はすごかった。それからいく つかキーとなる試合があったよね。マンUとの試合では帰還後初のスタメンで退団以降初のゴールを決めたし、シティが優勝した後、オレらがタイトル奪還に向 けてチャレンジできるかどうかを量る上でいいテストになった。」
R ― 実際に優勝の"匂い"を感じ始めたのはどのあたりから?
D 「スパーズに負けたあとのチームの反応を見たあたりかな。あの敗戦のあとも難しい試合が続いて、シーズン後半戦さらにチームに疲労が溜まっていたわけだ けど、それでも勝ち続けた。内容は確かに良くなかったかもしれないけどね。そういう時には今シーズンは何かが起こるって分かるんだ。」
D 「あの頃の方がベターだったかな。なんでかって、選手としてより主力で戦えてたから。今とあの時の明確な違いは、あの頃のチームは既に成熟してたってこと だ。フランク、マケレレ、ギャラス…みんな24とか25歳でバリバリやってた。今のチームはもっと若くて、成長の伸びしろもある。クラブにとっては良いこ とだよね。」
R 「今とあの頃のチーム、どっちが強い?」
D 「そりゃあ、より多くのタイトルを獲ったほうだろうね(笑) 分かるだろ?だからあの頃のチームだ。でも今のチームもリーグを制したばかりで、それもシーズンの始めから首位に立ち続けての優勝だった。それはあの頃の チームでも出来なかったこと。これからの将来でどうなるか見ものだな(笑)」
R ― これまで獲得した中で一番のタイトルは?
D 「チャンピオンズリーグだ。最高の気持ちを味わえたし、優勝するまでのプロセスを考えても一番だ。キミらに一度決勝で負けてるからね(リオを指して)。」
D 「間違いなくね。あの決勝のことでひとつ明かすとすれば、90分終わったあとにユナイテッド陣営見たら皆疲れていてストレッチしてたんだけど…」
R 「あれ攣ってたんだよ(笑)」
D 「気づいてたさ(笑) だから監督に『ニコ(アネルカ)とオレを前に置いてくれ』って言ったんだ。そうすればCBとそれぞれ1vs1になって得点の可能性が広がるからね。でも結 局4-3-3にこだわって、キミらにしてみれば守りやすかったと思う。そんな裏事情があったんだ。まあ、あの退場があって『もうクラブにはいられない』と さえ思ったけど…」
R 「責任は肩に感じた?決勝で負けたことに対しての」
D 「決勝で負けたことに対してというよりは、失望させてしまった人に対して、だな。勝てる可能性はあったからね。」
D 「もちろん、もちろん。そこがオレが学んだところなんだ。CLにおいては、"自分たちの時"があって、まだその時が来ていないときは何してもダメ。でもその"自分たちの時"が来ているときは、たとえ準決勝と決勝で合わせて2つPKを献上したとしても勝てるんだ。」
R 「あの優勝はまるでシナリオが書かれているかのようだった。そういう運命だったよね。決勝まで辿り着いたのも凄い運の重なり合いだったけど、その決勝で君 は見事なゴールをチームにもたらした。2012年のミュンヘン、88分のゴールはドログバ。優勝を決めたPK、ドログバ。4度にわたるFA杯決勝、ゴール はドログバ。いつだって優勝メダルはドログバの首にかけられる。大一番男だね。」
D 「子どもの時にストリートで友達とサッカーをしてる時から、大きな試合で決勝ゴールを決めることを想像してた。プラスチックのペットボトルを切って、その中にキャンディを入れて優勝トロフィーみたくしてね(笑)」
D 「その頃からきっと大勢の人の前に立つのが好きだったんだ。オレにとってフットボールはもちろん競争力のある試合だけ ど、同時に人々を楽しませるためのものでもある。ピッチに立ったら観てる人に楽しんでもらいたいと思うしね。大きな試合になればなるほど、ゴールを通して 皆に楽しんでもらいたい、そんな気持ちでいつも臨んでいた。それが結果として良い形になったね。」
R ― ディフェンダーとのマッチアップについて聞きたい。ヨーロッパで何年にもわたって戦ってきた中で、一番タフだった選手は誰かな?
D 「これはいつだって変わらないよ。キミとヴィディッチ。よく『マンU相手にあんまり決めないよね』って言われるけどその通りで、マンU相手のゴールは格別嬉しかった。だからキミら相手にゴール出来た時は、絶好調だってことだ(笑)」
R 「ハハハ(笑)」
R 「対峙するディフェンダーとしては、ガツガツくるようなタイプの方が好きなの?」
D 「徐々に順応していった感じかな。フランスではいつもオフサイドギリギリのところでラインと駆け引きするようなスタイ ルだったから、チェルシーに来てターゲットマンとか、フランクやロッベンを繋ぐ役割をする上でスタイルを変えなきゃいけなかったし。チェルシー加入当初は 『ここでキングになってゴール決めまくってやる』なんて思ってたけど、皆ドリブルだけじゃなくて得点することも出来るから、そこから学ぶことも多かった な。」
R ― 一緒にやった中でベストの選手は?
D 「尊敬してるのはフランク・ランパード。一朝一夕であそこまでになったわけじゃない。本当にハードワークを厭わないんだ。あと凄くクレバー。オレにとってみれば、本当のフットボーラーっていうのは単にボールを持てる選手じゃなくて、賢さを備えている選手だ。」
R 「色んな人からフランクについてどう思うか訊かれる。確かにテクニックとか眼を見張るような技を求めるなら物足りないかもしれないけど、見事なまでに効率が良いよね。」
D 「フランクのおかげでオレは成長できたと思ってる。毎日練習後に一緒にシュート練習とかボールを受ける動きとか、こういう時はボールを貰わないようにとか…色々細かく練習したんだ。挙げてきたゴールのほとんどはその練習の成果だよ。」
R 「ひとつ、君にやられた事を思い出した。あのせいで俺の夏は台無しになったんだ。あれはウェンブリーだったよね?試合終了間際で決められたんだ。」
R 「そうそう。皆疲労困憊で、俺の足もまいってた。」
D 「オレも疲れに疲れてて、モウリーニョに『もう死にそうだ。これ以上走れない』って言ったら『ただBOXの中にいとけ。そしてワンチャンスで仕留めるんだ』って言われたよ。そうやって自信を彼は選手たちに植え付けることが出来るんだ。」
D 「たとえ上手くいっていない試合があっても、たった一回、一回だけでも良いボールがスペースに出れば十分。それを活かすような監督だ。それで選手たちは信頼を感じて、監督に応えなきゃって思うんだ。やってやるってね。」
R ― これまで幾つにも及ぶ偉大な功績を収めてきたわけだけど、これからはどんな事を証明していきたいと思ってる?
D 「傲慢になりたいわけじゃないけど、もう証明することはないと思ってる。けどエデンや、ウィリアン、オスカーといった 若い選手たちに伝えることはまだまだある。彼らの助けとなるためにオレはいるしね。選手としては、キャリアを始めた当初では信じられないほど多くの成功を 収める事が出来たし、これからは一人の人間として、自分の慈善団体にフォーカスしていきたいな。救える命を救うこと、これはオレにとって本当に大切なこと だから。」
D 「そうだな。オレの育った家庭は父親が全部面倒を見てくれて、小さいところで家族みんなで暮らしてた。凄く嫌だったけど(笑)、そういうわけであらゆるものを共有してたな。でもこういう状況は今でも起きているし、この活動は本当に大切な活動だ。」