うるとらんぷす

「チェルシー」という単語に対する反応が人より2.7倍速いチェルサポによる備忘録。

【BPL#18】"Classy Chelsea"~チェルシー v ウェストハム・ユナイテッド~

 

ボクシングデーでの開催となったこの試合。ホームに迎えるは、今季ビッグサムの指揮の下絶好調を維持し、欧州の舞台へのチケットさえ射程圏内に捉えているウェスト・ハム(以下『西ハム』)。



両者のスタメンはこちら。西ハムは4-3-3の布陣で中盤の構成はノーラン / ノーブル / クヤテの3人、その前にダウニング、エネル・バレンシアという両翼を置き、トップには大砲キャロル。対してチェルシーは変わらずいつもながらの面々が出揃 いました。それではキックオフ。



◯西ハムの3センター

中盤に3枚を置いて守るいわゆる「スリーセンター」を採用するチームがプレミアではちらほらと見られます。ここ最近で対戦したところだと、アスト ン・ヴィラ、サンダーランドハル・シティ、QPRなどなど。4-4-2や4-2-3-1と比べ単純に中盤に置く人数が多いので、「バイタルエリアのス ペースを消せる」「中盤を数的優位で守れる」といったメリットがある一方、相手の攻撃が2人の場合1人余ることになるので、そこの役割分担が曖昧になると フィールド10人という制限があるフットボールにおいて1人分の効力をロスすることになるリスクもあります。

西ハムは今季この3センターに加え機動力とフィジカルのある前線を駆使することで好調を保ち、ディフェンディング・チャンピオンであるシティをホームで叩くことにも成功しています。 

 


このように守る時は両翼のエネバレ&ダウニングが中盤まで下がり、チェルシーの2列目にボールが入れば素早く複数人で囲んでいくというのが基本的なボール回収のメカニズム。


ただこの試合は見事に3センターの副作用が発症してしまった感のある西ハム。エネバレ&ダウニングが中盤まで下がるというシステマチック な動きは形式上実行されていましたが、中盤3枚(特に左サイド)の守備がどうもパッとせず。ノーブルとノーランが丸被りで同じところにプレスをしにいった り、縦パスの楔に対する反応が緩く簡単に前を向かせてしまうシーンが目立ちました。

またエネバレの気持ち守備も露呈し、イヴァノとのミスマッチによってチェルシーは右サイドで割と簡単に起点をつくれていました。その影響もあってか、前半途中でアザールがウィリアンとポジションをスイッチし右から崩していこうとする試みも見られました。



◯相手のラインを押し込む⇒崩し作業に入る  という試合の運び方をモノにしつつあるチェルシー

昨季までのチェルシーからの変革として、「相手を押し込んでからも崩せるようになった」という点が挙げられるかと思います。その変革を成 し得たのは言わずもがなセスクとコスタ存在、および2列目のフリーランの精度向上なわけですが、その新たに手にした武器を使うにはまず「相手の全体ライン を押し込む」という作業が必要になります。

対戦相手によっては、リトリート(=帰陣)守備を選択しキックオフの段階で既に全体のラインを下げてくるチームもありますが、少なくともこの試合の西ハムに関してはそういった意思を持ってはいなかったと思います。


 ― どうやってチェルシーは西ハムのラインを押し込むことに成功したのか?

筆者はよく"中盤の制し合い"、"中盤の制圧"という言葉で表現するんですが、1つは単純に、上記した通り西ハムの中盤の強度が低く、「ラインを下げざるを得なかった」。そして2つ目は「裏抜け多用によってラインをコントロールした」ではないかなと。 
 
特にセスクは上2つの画像のように前半から頻繁的に裏抜けのパスを出すことで、西ハムに後ろを意識させることを目的にプレーをしているように見えました。また、後半ならまだしも前半序盤からマティッチが裏抜けの動きをするのは滅多に見られない光景です。

裏抜けの動きを反復して行うことで西ハムに裏を意識させ、全体のラインを押し込むことに成功したチェルシー。この「相手のラインを押し込 む」という作業は試合開始35分あたりで終えています。特に40分から前半終了までの時間帯は完全に相手を押し込み、攻撃陣による多彩な崩しとマティッチ / クエ太 / JTを中心としたゲーゲンプレスによってボール回収⇒波状攻撃の流れが完全に出来上がっていました。あと、ゲーゲンプレスをしながらたまにボール持ったと きにミドルまで打てちゃうマティッチってやっぱりチートレベルに達しつつあると思う。



セットプレーからキャプテンのゴールによって先制したチェルシーは1-0で前半終了。

後半になると西ハムは中盤の制し合いを意識し、全体のラインを上げて引き下がらないことを意識していました。59分にはノーブル⇒ソング でボール保持を補助、ケーヒル&JTに完封されていた大砲キャロル⇒サコーをエネバレとの2トップ気味にして前線を活性化 という采配をしてきたビッグサ ム。

ラインを下げないという強い意志をもって後半に臨んできた西ハムなので当然試合はよりオープンになり、それに伴いピッチ全体にスペースがうまれていきます。

すると62分、中盤でマティッチがボールを奪取するとそこからカウンター発動。アザールからコスタへと繋がりコスタの大振りな切り返しか ら左足で追加点GET。アドリアンは前半からビッグセーブを連発し頑張っていましたが、味方DFが3人も一気にフェイントにかかってお手上げ。

追加点を奪ってからは多少省エネモードに入りつつも、80分にはドログバと締めのミケルを投入し試合を閉じたモウリーニョ。昨季"19世紀のフットボール"と揶揄った西ハム相手に、見事21世紀のフットボールを見せつけました。でも今季の西ハムのフットボールは結構好み。


FT:チェルシー 2-0 ウェストハム・ユナイテッドJT(31'), Costa(62')
 
前半は圧巻のパフォーマンスで首位たる所以をしっかりと見せ付けられましたね。今季ここまででベストの前半だったんじゃないでしょうか。11人を固定化す ることに関しては賛否両論あるみたいですが、流石にシーズン中盤までくるとチームとしての完成度の高さを感じました。次節はこちらも好調のサウサンプト ン。