うるとらんぷす

「チェルシー」という単語に対する反応が人より2.7倍速いチェルサポによる備忘録。

【COC決勝】"First Of Many"〜チェルシー v トッテナム〜


タイトルを獲得していないのなら、いくら美しいフットボールをしようとも人びとの記憶からすぐに忘れ去られてしまう -ジョゼ・モウリーニョ

チェルシーに帰還した初年は、失意の無冠。今季このような言葉で新生チェルシーのタイトル奪取の必要性を説いたモウリーニョは、キャピタ ル・ワン・カップ決勝でスパーズを迎えました。リーグでは相手の本拠地で3-5と苦杯を舐めさせられただけに、絶対に負けは許されない決勝。そんなチェル シーの前に、「マティッチ欠場」という緊急事態が発生。さてどうする。



両者スタメンはこちら。モウリーニョの出した答えはズマのアンカー起用。4-3-3の陣形をとり、中盤の前にはセスクとラミレスを並べました。対するスパーズはリーグ戦でチェルシーDFを粉砕したエリクセン、ケインらを前線に置いた人選。それでは、キックオフ。


〇右WGイヴァノヴィッチを捨てたモウリーニョ

試合開始からボールを持つのはスパーズ。チェルシーはズマのアンカー起用が影響してか、ビルドアップを丁寧にしていって崩すというような意図はないように見えました。なので、恐らくはスパーズがボールを持つという展開も予想しきっていたと思います。

いつもは右サイドで高い位置をとり起点となるイヴァノも、基本的には最終ラインに残り常にフルバック(4バック)が揃っている状態をキープ。

チェルシーのカウンターとして見られた約束事は「ボールを持ったらまずは左に流れたコスタに預けましょう」ということ。コスタが左に流れ て起点をつくる動きはリーグで対戦したときにも実行されていました。コスタは得意の「アマゾンに生息する動物たちのじゃれ合い」みたいなノリでDFに突っ かかっていき存在感を示すも、なかなかチャンスというチャンスはつくれず。

スパーズの攻撃は、ベンタレブを中心にボールをキープしながら組み立てていくという感じ。普段頻繁に行われる「シャドリとタウンゼントを 同サイドに集結させる」という手法はそこまで繰り返し行われていませんでした。むしろシンプルにケインに縦パスをあてていくパターンが多かったかなと。

常にフルバックを維持しつつ、カウンターはコスタと+αで最小限の人員をかけるという守備構築優先のアプローチは、いかにもモウリーニョらしいなあと思いました。



〇ズマのアンカー起用

マティッチ不在という緊急事態に対してモウリーニョが施した対処は、ズマのアンカー起用。マティッチがいないことで懸念されたのは兎にも 角にも「バイタルの守備をどうするか」ということだったかと思います。そしてそれはすなわち、バイタルでのエリクセンとケインの絡みをどうシャットアウト するかということ。アンカーとトップ下が噛み合う形でエリクセンとズマが重なりあう場面が多くありましたが、エリクセン番をズマが遂行できたかと言われる と、どうかなと。
 


エリクセンに背後をとられ、見失うような場面はこのシーン以外にも幾つか見られました。また通常2枚のボランチを敷いてバイタルを守る チェルシーですが、この日は4-3-3なので、いかにして「セスク&ラミレスという中盤の2人で、ズマが持ち場を離れた時にバイタルのスペースを埋められ るか」が最重要ポイントだったのかと思います。この点に関しては、セスクとラミレスのネガトラ不整備を露呈してしまったかなと。
 
むしろ逆にスパーズはエリクセンでズマを釣ったときに、バイタルに飛び込む選手が足りないように思えました。先述したようにシャドリとタウンゼントの流動性はもう少し普段見られるのですが、両選手ともにサイドに張るような動きが主だっていました。
 


リーグ戦でチェルシーのバイタルを攻略したときは、このようにエリクセンボランチを釣って空いたスペースにシャドリが飛び込めています。

その意味では、エリクセンのズマを釣るランでバイタルを空けたときのターゲットがケイン単発だったので、チェルシーの守備陣は的をケインに絞り、ケインに楔が入ったときは素早く寄せることができていました。




'45 - 前半終了する直前のセットプレー。ウィリアンが放ったボールがズマに当たり、こぼれ球をJTが蹴り込んで先制。ボールを持たれていてもセットプレーで ちゃっかり得点奪っちゃったチェルシー、時間帯を考えてもスパーズには精神的にかなり重い1点を与えることに成功したかなと。


――――― 後半 ―――――


後半になっても全体的な構図は変わらず、スパーズがボールを持たされるような展開。チェルシーとしては変わらずフルバックを保ち、ズマが持ち場を離れたときのバイタルスパースのケアに関してはハーフタイムで修正が入ったか、セスクとラミレスの意識も改善されていました。


'56 - スローインの流れから、バイタルでボールを持ったセスクが左で張っていたコスタに出し、コスタがウォーカーを振り切ろうかというところでクロス。このボールがウォーカーにディフレクトして、ボールはゴールへと吸い込まれました。チェルシー、大きな大きな追加点。


'62 - ポチェッティーノはタウンゼントに代えてデンベレを投入。タウンゼントとクエ太のマッチアップはクエ太の完封勝利。相変わらずクエ太の対人能力の高さには唸らされます。


雨足が強くなるウェンブリー。まだ1点返せば空気を変えることができると信じて攻撃をやめないスパーズ。それでも決定的なチャンスはつくれません。ラミレス、ウィリアンの運動量が光る。

ソルダードが入ったあたりから、ケインは右SHのようなポジションでクエ太と対峙。それでもクエ太はそこまで仕事をさせません。


'93 - 優勝が決まる直前のところで、コスタに代えてドログバを投入。こういうところ、モウリーニョの憎いところ。


そして待望の試合終了のホイッスル。チェルシー、見事にCOCのタイトルを勝ち取りました。


FT:チェルシー 2-0 トッテナムJT(45'), Walker(56')※OG

マティッチ不在という緊急事態にも、ズマのアンカー起用で応急措置を施したモウリーニョ。決勝という一発勝負での勝負強さをまたも示すよ うな試合になったと思います。試合後には、優勝までの道のりにはクルトワやルイス、クリステンセンの活躍があったことに言及し、あくまでもチーム全員で勝 ち取ったタイトルであることを主張。これで今季タイトル1/3は達成ですね。あと2回優勝祝えるといいなあ。