うるとらんぷす

「チェルシー」という単語に対する反応が人より2.7倍速いチェルサポによる備忘録。

【CL#7】"A Tight Night, still Bright"〜PSG v チェルシー〜

 

CLもついにベスト16が出揃いまして、ここから更に熾烈な戦いが待っているわけですが、リーグ、カップ戦、CLという3冠をあわよくば狙っ ているチェルシーは、昨季同様PSGと相見えることに。PSGのホーム「パルク・デ・プランス」といえば、昨季1-3という苦杯を舐めさせられた場所 (2ndLegの逆転劇の影に隠れがちですが)。早朝からもうあんなにハラハラする思いは勘弁ということで、結果に胸を張ってロンドンに帰りたいチェル シーであります。

 


両者のスタメンはこちら。PSGはこの試合の前のリーグ戦で、1試合に4人もの負傷者を出すトラブルが発生したそうで、中盤の底には、元 チェルシーダビド・ルイスインサイドハーフには、ヴェラッティとマテュイディが名を連ねました。対するチェルシーも、怪我人や病人など厳しいチーム事 情を抱えマティッチの相棒にはラミレス、セスクが1列あがったトップ下での起用となりました。コスタは3週間のサスペンションから明け、無事に実戦復帰。 それではキックオフ。



〇ブランによる守備構築からの試合へのアプローチ

 この試合でまず目を惹いたのは、PSGの守備。イブラヒモビッチがトップということも影響してか、前線からプレスを全力でかけてくるよ うなことはしません。むしろ、イブラヒモビッチは歩いています。じゃあPSGはどういう守り方をしたのかというと、チーム全体としての共通認識として持っ ていたのが「パスコースを遮断する」という守り方です。

4-3-3というフォーメーションを敷いてきたブランはルイスをアンカーとした4-1-4-1のような布陣に変形させ、チェルシーが最初 にボールを持つ最終ラインorマティッチにプレッシャーをかけるのではなく、そのパス供給先であるセスクやウィリアン、アザールといったターゲットになり 得る選手へのマークを徹底させました。


PSGの守備システムがひとつ嵌ったシーンがこの10’の場面。
今季のチェルシーの攻撃における特徴のひとつとして、「2列目の流動性によって、選手同士が限りなく近い距離でプレーをする」ということ が挙げられるかと思います。実際にピッチ上では、ウィリアンとアザールが限りなく近い距離で、なおかつセンターサークル付近、すなわち中央でボールを受け ようとする動きが散見されました。
 
 
ここにマティッチがアザールへの楔のボールを無理矢理にでも入れたため、ハイラインによって最終ラインからの素早い寄せを可能にしたPSGに守備網に引っかかり、マテュイディチアゴ・シウバに囲まれボールロスト。ピンチを招いています。

この「パスコース遮断」という守られ方をされたチェルシーは、プレミア特に下位相手ではケーヒルなりマティッチが強引に自らボールを前に 前進させるようなドリブルという解決策を打ち出すことができるのですが、ここはCL。持ち運んで取られようものならば、すぐにでも得点に結び付けられてし まいます。またボールを持たされる時間が長かったマティッチにはセスクまでのビルドアップ能力はなく、パスコースを遮断されパスの出しどころに迷う姿が何 度も目撃されています。

この守備システムの強度をさらに引き上げる要因をとなったのは、インサイドハーフの一角・ヴェラッティだったのではないかなと。中盤の制 し合いにおいて身を投げ出すことを厭わず、イエローぎりぎりのラインでの守備をもってひたすらボールを狩っていました。ちなみに、PSGの攻撃時に時間と リズムをコントロールするのもヴェラッティ。その献身性は後半になっても落ちることはありませんでしたね。相変わらずボール取られないし。



攻撃への組み立てを押さえ込まれてしまったモウリーニョですが、20'あたりからチームに変化が。
 
 
それまでボールを最初に持つ役割がマティッチであったのが、セスクが最終ラインまで降りてビルドアップに加担する動きが出始めました。そして ウィリアンとアザールはポジションスイッチを敢行。立ち上がりに比べてだいぶ幅を意識したワイドにポジションを取る動きが見られました。

36' - セットプレーの流れから、左サイドからJTがあげたクロスをケーヒルがフリックし、BOX内のイヴァノが頭で合わせてゴール。ディフェンダーの、ディフェンダーによる、ディフェンダーのためのゴールです。チェルシーの守備陣の攻撃力ほんとどうなってるんだ。

攻撃に関して。個人的には、ロングボールのターゲットがずっとコスタになっていたし、コスタ1人でチアゴ・シウバマルキーニョス(+ル イス)というディフェンダーたちに競り勝てというのも無理な話なので、ウィリアンやアザールにサイドの裏取りをさせても良かったんじゃないかと思っていま す。相手のSBとのマッチアップならウィリアン、アザールに十分ん勝機もあったでしょうし。ただ、20'あたりから見られた修正は少なくとも最低限のテコ 入れにはなったんじゃないかなと。このおかげでいくらか攻撃にリズム出始めました。


――――― 後半 ―――――



〇4バックの幅

 後半になると、攻勢を強めたのはPSG。ヴェラッティを中心に後方でポゼッションを高め、マテュイディをバイタル付近に置くことで連携 して崩す際の「つなぎ」としての役割を与えていました。前半と比べると明らかにPSGによる攻撃のキャラクターが立った要因としては「意識的にBOXの角 付近(いわゆる「ペナ角」と言われていますけど)を使うようになった」ことを推したいと思います。 
 


まずチェルシー側の反省点としては、「前半のように全体のラインを一定の高さに保てなくなった」という点があります。どうしても疲労から か、ラインを押し込まれてしまっていました。これによってサイドバックインサイドハーフの選手がより攻撃にウェイトがかけられるようになったPSGは、 左サイドに主に起点をつくるような攻撃の手立てを見せます。チェルシーの最終ライン(=4バック)の幅が試合を通して狭いという状況にあったので、ペナ角 攻撃をやられてしまうと、どうしてもボランチがそこをカバーしなくてはならない事態が発生。さらに悪いことに、このカバーをマティッチ、ラミレス、はたま たセスクのうち誰が行くのか、恐らくとり決められていないようでした。 
 


あとは何度か前半にも裏への抜け出しを許していたファン・デル・ヴィールにも、クエ太とアザールの間のスペースにパスを出され抜けられるシーンがいくつか。4バックの幅に対してアザールが外に開きすぎた守備のポジションをとっていたので、利用された形。

それでもアザールは「ファールを稼いで自陣ボールにするという」という意味で、獅子奮迅の活躍。これで1人くらいの退場まで稼げるように なってくると、いよいよ人間やめちゃった世界に足を踏み入れることになるかなと。逆に言うと、アザールへのファールくらいでしか、自分たちのボールにする ことができなかったチェルシーという見方をすることもできます。



54' - 左サイド、マテュイディのクロスをカバーニに合わせられ、同点弾を献上。ラミレスのポジションもよく分からなかったし、あそこまでBOX内に守備の枚数揃っていたのに、全員ボールウォッチャーになっていたという失態。ただ、クロスはお見事でした。

その後も攻勢を強めるPSGは逆転を狙い猛攻をしかけるも、クルトワという壁が立ちふさがり、なんとか虎の子のアウェイゴールを守りきったチェルシー。試合運びを考えても、アウェイドローで満足といった感じ。


FT:パリ・サンジェルマン 1-1 チェルシー|Ivanovic(36') / Cavani(54')

「勝利に近かったのは相手のほう」というモウリーニョの言葉通り、特に後半はひたすら守りを強いられた試合でした。ただそれでも1-1と いうスコアにとどめておけるのがモウリーニョイズムであり、このチームの強さかなと。クルトワに関しては圧巻のパフォーマンスで、このドローはクルトワが もたらしたドローと言っても過言ではないでしょう。次戦はホームでのバーンリー戦。最近ホームでバーンリー相手に引き分けたチームがあるそうなので、気を 緩めずに。