うるとらんぷす

「チェルシー」という単語に対する反応が人より2.7倍速いチェルサポによる備忘録。

~Standard|CEOロン・グーレイの言葉~

StandardにCEOであるロン・グーレイのインタビュー記事が載っていて面白そうだったので、日本語におこして紹介させていただこうかなと。元記事はこちら。



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英国のライバルチームらは気に入らないかもしれないが、ブルーズのCEOであるロン・グーレイはこう言う。
 『今やチェルシーは世界中から尊敬されるクラブになった』と。

ブックメーカーは今季のリーグ優勝候補にチェルシーの名を挙げ、ファンもリーグ優勝を既に夢見ているころかもしれない。だが、ロン・グーレイはあ くまでも『他のクラブに対して失礼になろうという気は無い。リーグ優勝の可能性を秘めているのは次の5クラブだ。我々とリバプールアーセナル、そしてマ ンチェスターの両勢。決してマンチェスター・ユナイテッドを軽視することはできないよ』と慎重な姿勢を見せる。

この言葉には、かつてチェルシーに来る前ユナイテッドの組織の一員だった51歳の寡黙さが伺える。ちょうど5年前の今月にピーター・ケニヨンを継 いだ彼は比較的控えめな性格である。それでも私たちが彼に話を聞くと、この時ばかりは身を乗り出すような勢いで言葉を綴り始めた。

「私がこの職を引き継いだとき、このクラブに対する周囲からのイメージに対して思うことがあった。『果たしてチェルシーというクラブは愛されてい るのか?それとも嫌われているのか?』とね。今やチェルシーFCは世界中で尊敬されている。国際的にも以前より"愛される"チームになったんだ。」

では国内では?

「国内のクラブ事情はもはや部族みたいなものだろう?」

そう彼は笑いながら答えた。

「英国のマンチェスター・ユナイテッドファンをチェルシーファンに変えることなど到底無理な話だ。だがアジアでは、それが可能な場合だってある。 チェルシーのファンベースは今世界を越えて劇的に広がっている。2600万ほどだったのが4億弱までに成長し、アジアではマンチェスター・ユナイテッドに 次ぐ人気を誇る。アジアで試合をするとなれば多くの家族が見受けられる。19歳から32歳に至る多くのファンがそこに集うんだ。
 アジアにおけるコミュニティの拡大には特に力を注いできた。日本、韓国、中国、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピンにはのべ13ものス クールが開設されている。それらは全てチェルシーの監督らによって運営され且つ非営利だ。こうやってアジアにコミュニティを広げることで多くの子ども達に スポーツの機会を提供したいと考えているよ。」

グーレイはこうしたアジアにおけるファンの獲得の背景にはモウリーニョの影響があるとし、かつてUEFAに『フットボールの敵』とレッテルを貼られた男を称える。

「ジョゼが戻ってきた時に我々はアジアに足を運んだんだ。それはそれは目を見張るものだったと思う。彼がどれだけアジアのファンベースに影響を及 ぼしてきたかを実感する機会など無かったからね。インドネシアでは、10万人収容のスタジアムに集まった大勢のギャラリーを警察がコントロールし切れなく なって試合前日の公開練習をキャンセルしなければならないほどだった。試合の日の夜にジョゼが一歩外へ出れば、そこには8万5千人もの人たちが歓声をあげ ていたよ。流石にジョゼもいかにアジアにおけるチェルシーの存在が激変したかということを実感したと思う。」


モウリーニョはここ7ヶ月の間にチェルシーを率いる3人目の監督である。その前はと言うと、2012年11月にロベルト・ディ・マッテオが解任。その後を継いだラファエル・ベニテスの就任はファンの反感を買うこととなった。

「変化が必要だったんだ。当時、他を見渡してもそこまで多くの選択肢は無かった。それにあれは将来を見据えての判断だった。目の前のハードルをどう越えていくかをクラブは常に考えねばならないからね。」

ベニテスでさえチェルシーを率いた。レアル・マドリードにいたモウリーニョを引き戻す考えは無かったのだろうか?

「他のクラブに在籍していた監督のことは話せないね。他のクラブや監督については論じたくない。それは失礼に値するだろうから。」

グーレイがより話したいと思う話題はモウリーニョと交わした4年契約だろうか。

「10年でもここに居て欲しいね。ジョゼはクラブを理解し、私を理解している。彼が以前ここに居たとき私は執行役員のチーフとして働いていたが、当時から馬は合っていたよ。」

「ジョゼはこれまで招いてきた監督達とは異なる方法でメディアに対応する。メディアからのプレッシャーから選手たちを守るだけではなく、クラブを もそういったプレッシャーから守るんだ。彼はそういったメディアへの対応力に長けているし、それによって私もクラブの運営に専念できる。」

このCEOと監督との連携の良さは今夏の移籍市場でより明白になった。

「皆口を揃えて『チェルシーは今夏どこよりも上手くビジネスを進めた』と言っているね。」

7月が終わるまでにチェルシーは£80mにも上る支出金でジエゴ・コスタ、セスク・ファブレガス、フィリペ・ルイスといったタレントの獲得をまとめたが、ダビド・ルイスロメル・ルカク、そしてデンバ・バの売却で得た利益によってそれを埋め合わせた。

「今回の移籍市場においては、我々は売却によって得た利益にのみ頼り、獲得をした。間違いなくこれまでしたことのない試みだ。FFPが制定された 今、少しの金額も無駄には出来ないし、なるべく利益を出す為に尽力している。中には『FFPに最初に引っかかるのはチェルシーだ』と言うような人もいたか ら、彼らを驚かすような結果になっただろうね。我々は今良い傾向にあるよ。」

この良い傾向に後押しされ、チェルシーは昨季よりも多くの利益を出すことだろう。そしてグーレイを誇らしげにする事実とは、ロマン・アブラモビッチの財布無しにしてチェルシースカッドが変革を成し遂げたという事である。

「今チームの平均年齢は24歳。これはこの先10年を見据えてのものだ。」

それは良いとして、26人もの選手たちをローンに出すというのはどうなのだろうか?他のクラブに下請けに出すようにして、将来有望なタレント達を溜め込む新たなケースと言っていいのだろうか。

「多くの人は、この若手選手たちがクラブの発展にとって大きなピースであることを分かっていないんだ。このやり方は、早い段階で若手選手への投資 をしたいというクラブの思いの中で行っている。将来を見込んでいる選手たちにね。2つの例をあげよう。デ・ブライネとルカクだ。この2人は将来に大きな可 能性を感じて獲得した選手たちだ。折り紙つきだった。我々の構想の中にも勿論あった。だがなかなか上手く行かず、売却をする機会が訪れた。それはクラブ、 選手双方にとって最善の道だったんだ。
それでも彼らは毎週チェルシーでプレーしたいという思いを貫いた。だがプレーの保証など、どの選手にだってする事は出来ない。結果的に彼らは選手 として成長するための他の環境を選んだ。批判は受け入れるさ。もしその売却によってチームに成功がもたらされていなかったならばね。事実、我々は今こうし て非常にピッチの上で充実している。」

「ローンというのは単に『オーケイ、じゃあ1年後にまた会おう』なんてものじゃないんだ。我々はローン先には全て、ローンに出した選手の状況が日 ごとに把握できるような環境を持ったクラブのみを選んでいる。試合後必ず30分以内にクラブの誰かしらに向けてその選手のレポートが送られてくる。選手た ちへの特別なメディカルチームだって備えているんだ。仮に選手が怪我した場合にはクラブに引き戻すかどうかを判断する必要があるしね。こうしたサポートが あって始めて選手たちはローン先で成長することが出来る。だが残念なことにローンに出た選手が全員ここに戻ってこれるわけではない。6人をローンに送り出 したとして、3人は帰ってきても3人はそのまま完全移籍という事だってある。」

フランク・ランパードアシュリー・コールが去り、英国人選手として核となってきた選手が唯一キャプテンを務めるジョン・テリーだけになったという意見に対しても、グーレイは力強くこう論じる。

「素晴らしき若い英国人選手が次世代にいるという事も事実だ。"次のジョン・テリー"となるような存在がね。今ここで名前を挙げるのはよしておくよ。」

「我々には誇るべき下部組織アカデミーのシステムがある。だがそのアカデミーはまだ9年前に始動したばかりで、ファーストチームでアカデミーの選 手を見るのにも時間は要するさ。今だって3人のアカデミー選手がファーストチームに在籍しているが(ネイサン・アケ、アンドレアス・クリステンセン、ルイ ス・ベイカー)、素晴らしい事だね。彼らがファーストチームに食い込んみレギュラーの座を勝ち取るのを楽しみにしているんだ。ジョゼは『もしイズィー・ブ ラウン、ドミニク・ソランケ、ルイス・ベイカーがこれから先何年かの間にファーストチームに入れなかったらそれは私の責任だ』とまで言っていた。アカデ ミーに絶対の誇りがあるんだよ。」

「かつて選手獲得に充てられた投資によって、世界で称賛されるようなチームになったのは事実だ。だがこれから先もチェルシーが世界の最前線でいる ためにはワールドクラスのタレントを"自給自足"していかなければならない事は我々も理解している。近い将来、アカデミーから多くの財産が生み出されてい くのを目にすることが出来るはずだ。我々の掲げる目的とは、ワールドクラスの選手への投資との均衡を保ちつつ、このアカデミー・プログラムを通してピッチ 内外において長く続く成功を収めること。これは同時にFFPを遵守するうえでも大きな助けとなるはずだ。」



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少し長文になってしまいましたが、以上ロン・グーレイのインタビューでした。モウリーニョとの健全な関係が伺えましたし(きっとこの2人の関係に TDのエメナロも入ってくるんだろうけど)、FFPやクラブの将来を見据えたアカデミーへの投資が進んでいることが改めて明らかにされて嬉しく思いまし た。チェルシーの下部組織の強さを知りつつも、ユースで活躍する選手たちがトップチームでプレーする機会を得られず他所に環境を移していくのを見るのはな かなかに辛いものがありましたからね(ストッフとかジョシュとか)。あと余談ではありますが、インタビュー内でグーレイが"次のジョン・テリー"と言って 明言を避けた選手、チャロバであって欲しいなあと個人的には思っております。それでは。