このクラブに初のビッグイヤーをもたらした、地蔵ことディ・マッテオと再会することになったシャルケ戦。CLでの輝かしい記憶は心の中にしまっておいて、あの時とは全く別のチームになったよということを示したい試合であります。
両者スタメンはこちら。チェルシーは常連がいつも通り名を連ねたメンバー構成。シャルケは右SBにアツト・ウチダ選手、トップ下には元プレミアのボアテング。前回スタンフォードブリッジでひと暴れしたドラクスラーは怪我のため欠場のようです。それではキックオフ。
シャルケの守備ブロック は4-1-4-1、または4-5-1のような形。トップにフンテラールを置きますが、特にプレスをさせる意向は地蔵には無いようでした。地蔵はプレスし ろって言っているのにフンテラールが地蔵を無視して走らないっていうのが真相だったらちょっと面白いなとか思ってしまった。
チェルシーはすっかり定 着した「オスカーが落ちてボールに触るポジションスイッチ」によってセスクを前線に上げていきます。また、シャルケはプレスではなくリトリートの守備を選 択していたためにチェルシー陣内に残っているのはフンテラールのみという状況がほとんどだったので、マティッチが後ろを気にすることなく思う存分プレスを かけていきました。
◯2列目の収縮性が生みだす力
開始早々のコーナーからJTのヘッダーであっさりと先制に成功したことでシャルケの出鼻が挫かれた感はありますが、それを抜きにしてもこの試合のチェルシーの攻撃は90分間通して目立ったミスはゼロで完璧と言っていい出来でした。
リーグ戦前節のWBA相手には「攻撃の幅」を意識させた戦い方をしたモウリーニョですが、この試合でもその傾向は見られました。今回はこの試合に限らず、2、3歩下がって今季のチェルシーという少し広い視点から見ていこうかなと思います。
先ほど触れた「攻撃の幅」についてです。守備の幅については?という声も出てきそうですが、機会があれば。
攻撃の幅というのは幅ですからもちろんサイドの選手によって決められていきます。チェルシーはこのSHの使い方が上手いなあという印象を今季は受けます。
画像を見ると左サイドに左SB(クエ太)、左SH(アザール)、3列目(セスク)、右SH(ウィリアン)が集結していることが分かります。
同サイドに人を集めて数的優位を作り出すこの手法はリーグ戦でも頻繁に駆使されています。昨季のエバートンでもマルティネスが使っていた記憶があります。
これまで、特に4-3-3を敷いていたモウリーニョの"第一政権"時だとサイド(またはウィンガー)の選手(ロッベンやダフ、ジョーなど)はサイドに張ってボールを受け、カットインなりクロスなりでサイドに起点をつくることが主な役割でした。
それが現在のモウリーニョ・チェルシーだと、ウィリアンのポジショニングが物語る通りサイドに張るどころか逆サイドまで顔を出すことが役割として割り当てられています。なお、場合によってはアザールが逆サイドに顔を出すこともあります。
この「『2列目の収縮 性』によって、前線に上がったセスクと2列目の距離を縮め更にケミストリーを引き起こす可能性を高める」というのが今季のチェルシーにおける攻撃の最大の 強みであり、第一政権後、イタリア、スペインと長い旅をしてモウリーニョが得たものではないかなと。
◯歯車がすべて噛み合った2点目
「2列目の収縮性によって左サイドに人を集結させ、数的優位の状況で崩していく」というシステムの応用編が、この2点目です。
状況を追いながら丁寧に見ていきます。まず、この段階で既にウィリアンとアザールはお互いのポジションをスイッチさせています。右アザール、左ウィリアンです。そして前半27分頃、モウリーニョが何やらピッチに指示を出す姿がカメラに抜かれました。
その後セスクがイヴァノと話し合う場面。(画像下部)
オスカーとセスクはポジションをスイッチ。
オスカーからセスクへと楔が入った刹那、3人が反応し前線へと全速力。
前半終始左サイドを突いてきたチェルシーですが、この恐らく初となる右からの攻めで追加点をGET。左サイドからの攻撃はこのための布石だったという事でしょう。
「数的優位で偏ったサイドを集中放火」しておいて、"今"という時に逆サイドに攻撃の拠点を移し手薄になった(試合を通して攻撃を受けていないのでもちろん対応にも慣れていない)サイドを一気に崩していく綺麗な流れでした。
ここから2列目SH(アザール&ウィリアン)の役割として考えられるのは、「あくまでも攻撃の起点として計算されているのはアザール」ということです。
恐らく、アザールを右サイドにスイッチさせる事が、追加点を生んだこの「ゲリラ攻撃」の第一プロセスだったはずです。
この事からSHの役割としては「攻撃の起点ではアザールを」「数的優位などの収縮をつくる働きはウィリアンのフリーラン」を使うというのがモウリーニョの割り当てたロールではないでしょうか。
まあ、「絶対的な運動量とフリーランが得意なウィリアン」、「ボールを足元で受けてDFを背負ってもキープできるアザール」というそれぞれの特性を考えると至極当然かもしれませんが。
これを考えると、シュールレのコンディション云々を抜きにしてもウィリアンが使われる理由が分かるような気がします。いよいよ得点にも絡むようになってきましたし。中盤であれば基本的にどこであっても生きていけるウィリアンのポリバレントさは貴重のように感じます。
前半のうちにコーナーからのOGというプレゼントを貰い3-0としたチェルシーは、後半も優位に試合を進めていきました。
コスタに代えてドログ バ、オスカーに代えてラミレスとピッチに送ると、セスクのフィードから裏取りに成功したウィリアンとドログバ。ウィリアンのラストパスをドログバが流し込 んで4-0。その後もドログバからラミレスで5-0とし、交代で入った2人が容赦なくシャルケの傷に塩を塗っていきました。そして足早に帰路につくシャル ケサポーターたち。
シャルケはウチダ選手のフットボールIQの高さを感じさせましたが、チェルシーの左集中放火によってオーバーラップよりも自陣で守ることを強いられ、良さを出し切れず。ただ贔屓目なしにシャルケで一番上手いなと思いました。
その後シュールレを投入し、コスタ&セスク&オスカーという今のこのチームの中核たちを休めることに成功したモウリーニョ。グループステージ最終節を残し、首位&突破をドイツの地で決めました。ミッションコンプリート。
FT:シャルケ 0-5 チェルシー|JT(2'), Willian(29'), Kirchhoff(44' ※OG), Drogba(76'), Ramires(78')
攻 撃から守備にわたって全てをほぼ完璧にこなし、主力休養まですることに成功したモウリーニョ。そりゃあバラックも太鼓判押しますよね、といったようなパ フォーマンスでした。終始安心して観ることが出来ました。今のチェルシーは本当に強いなあと心から思いますし、選手たち自身が何よりそれを感じてプレーし ている気がします。突破を無事に決めることが出来たので、GS最終節はフレッシュな顔ぶれにも期待です。次はアウェイ黒猫戦。