うるとらんぷす

「チェルシー」という単語に対する反応が人より2.7倍速いチェルサポによる備忘録。

~The Guardian|クルトワの挑戦~

 

Guardianにクルトワのインタブーが掲載されていたので、日本語におこしてみようと思います。 元記事は こちら



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ティボ・クルトワの本当の意味でのスタートは、ベルギーA代表での初トレーニングセッションだった。未だ2週間前にバルセロナによって 苦杯を舐めさせられたこと(1-4の敗戦)を消化し切れていなかったアトレティコ・マドリード所属のティーンエイジは、EURO2012予選の大一番カザ フスタンとドイツ戦に向けた代表チームに将来有望の若手として招集された。


ヴォルウェのぬかるんだピッチでは、ジョルジュ・レーケンス(当時の代表監督)がスカッドを攻撃と守備に割り振り、ファーストチョイスのキーパー、シモン・ミニョレをゴールネットの裏で待つように指示し、やや厳しい口調でそそくさとクルトワを彼の後ろに並ばせた。

「ヴィンセント・コンパニー、ファン・ブイテンといった面々がそこにはいた。2人とも大男だよ。当時19歳で初招集だったもんだ から、コーナーやセットプレーでDFの配置を調整したり指示を飛ばすのも、彼ら相手だとビビッてた。『アイツをマークしろ』とか『ここに立っていてくれ』 とかね。でもいくら最初はシャイだからといっても、キーパーとしてそういう指示はDFに届けなきゃいけない。」



ここ3年間におけるクルトワのパフォーマンスは、彼が生粋のサラブレッドであることを証明してみせた。3年間でどれほど成長した かは、先日親善試合のアイスランド戦で、チームメイトの杜撰なプレーに対し即座に激昂した姿から読み取ることができる。代表のチームメイトのうち何人かが 守備を怠っていたことから、監督であるマルク・ヴィルモッツに彼らの交代を要請したという。のちに興奮が冷めた頃、その件に関しては釈明がなされたが、あ の激昂はベルギーそしてスペインにおいて国内タイトルを勝ち取り、現在プレミアリーグで首位を走るチェルシーで輝きを放つ22歳ならではのものであった。


間違いなく世界で最も将来有望なこのGKを、アトレティコによるパーマ・ローン(※原文perma-loan:"perma" は"permanent"=「永久」のことで、いわゆる『借りパク』のような意)で手放すまいと、チェルシーは彼らの懐にクルトワを引き戻した。そんなク ラブが現在心を奪われているのは、クルトワと同じく夏に加入したジエゴ・コスタのガッツ溢れるプレー、はたまたセスク・ファブレガスの創造性と『隠された 鷹のツメ』なのかもしれない。が、それでもクルトワはリーガで築いた自身の価値を持続することにのみ集中している。身長199cmでスレンダーな体格なが ら、その風貌は堂々かつ荘厳だ。ここまでのチェルシーの無敗記録の立役者の一人で、ジョン・テリーギャリー・ケーヒルもすっかりこの新たな守護神に絶大 の信頼を寄せている。そんな彼が与えた最大のポジティブな要素は、クラブに忠誠を誓い、ポジションを失ってもなお何一つとして言い訳を漏らさない完全なプ ロフェッショナル、ペトル・チェフを惜しむ声がそこまで出ていないという事だろう。



クルトワのアトレティコにおける「1年ローン論争」に終止符を打ったのは、ジョゼ・モウリーニョであった。2011年にゲンクか らチェルシーに加わったクルトワは、ファーストチームがプレシーズンのために極東へと出発するその日にメディカルチェックを受けたが、アトレティコで経験 を積むこととなった。そしてGKコーチであるクリストフ・ロリションを中心に、時には「バックアップのバックアップ」として長年を過ごしたイラーリオが彼 を訪ねその成長具合を確認しに来た。

「ゲンクから加入した当初は具体的な案はなかったよ。単に『将来的にはここで』というもので、実際に出場できるかどうかはローン 先での成長具合に左右されるということだった。アトレティコでの最初の2年間はとても上手く行って2013年にチェルシーからローンバックの声がかかった んだ。けどその時は100%の確信が持てずにいたし、もう1年アトレティコに残れば次の年はスペシャルなものになると感じた。その結果リーガを制して、 CL決勝にも進むことが出来たよ。

そうして3年目を終えてからは『今がチェルシーに戻るときだ』と感じたね。監督から貰った電話は今年頭の一度だけで、これからの シーズンでどうやっていくつもりだとか、チームに関しての細かな意見を聞いた。モウリーニョはこれからのチェルシーは強力なチームになるし、君もその一部 になって欲しいと言ってくれた。

モウリーニョの下でプレーする今、何故彼のチームがメンタル的にいつも強いのか知ることができたよ。どんな時でも選手たちのモチ ベーションを上げてくれるんだ。もしピッチのサイドに立っている監督が意志が弱かったり一貫したスピリットを持っていないような監督なら、選手たちはやっ ていけないだろうね。でもモウリーニョは違う。モウリーニョは時には友達のようにジョークを言い合う事もあれば、少し距離を置いて厳格にふるまうこともあ る。その両側面をいつどんな風に使い分けるべきかを心得ているんだ。シメオネも"シメオネ流"で似たような方法でチームをマネージメントしていた。」

そのアルゼンチン人監督はリーガ初年の半ばでクルトワと出会い、計2度彼とともにローン元であるチェルシーを下した。UEFA スーパーカップでは、CL優勝監督であったロベルト・ディ・マッテオの立場を追いやるような勝利をあげ、4月に行われたCL準決勝でのチェルシーに対する 勝利は、フィリペ・ルイス、ジエゴ・コスタ、クルトワが「チェルシー再生計画」の一員となることを決定付けた。スタンフォード・ブリッジアトレティコが 達成した1-3という試合は、チェルシーが最後に負けた試合だ。


「あの時の僕らを倒せるチームはそうそういなかったと思う。」

テリーのヘディングをセーブしその勝利に貢献したGKはそう言う。

「自分たちの組織というものを持っていたし、コケやコスタといった個の力も含めて最大のクオリティを誇っていたね。選手一人ひと りだけを見れば、スペインで一番ではなかったと思う。個の力で言えば今のチェルシーの方があの時のアトレティコよりも強い。でも当時重要だったのは、それ ぞれがお互いのために献身的そして利他的なプレーをする事だった。絶えず走り、チームメイトのミスをカバーし、全てをそこに注いでいたんだ。

それは今のチェルシーにも共通しているよ。だからこそ、リーグで首位を守れているんだと思う。個の力だけでなくチームとしての規 律もある。闘うメンタリティだ。リバプール相手には、先制を許して苦しみはしたけど勝利を得た。あそこで勝つのは簡単なことじゃない。他の試合でも、たと え上手くいかず苦戦している時であってもとにかく戦い続け、何かしらを生み出してきた。」



9月に新たに5年契約を結んだクルトワは、アーセナルと対戦しアレクシス・サンチェスと衝突した試合であっても、慌てふためくことは無かった。むしろチームメイトから受け入れられていることを実感したことだろう。その試合で彼は目まいを起こし病院送りになったが、

「試合が終わってすぐに、チェフは病院にいる僕に電話を2度かけてくれた。その後テキストメッセージを送ってくれたよ。」 とクルトワは言う。
 
当初心配されていたよりも怪我は軽傷で済んだが、8年前同じように相手選手との衝突によって頭蓋骨を骨折したチェフは、肩と背中を使って衝撃から頭部を守る術をクルトワに教えた。

 
クルトワとチェフ、ポジションを争い合う者同士だが、仲の良い友人でもある。
 
「ここに来る時にメディカルチェックを受けていたんだけど、ペトルはわざわざ挨拶をしに来てくれた。ドログバとジョン (・テリー)も歓迎してくれたよ。チェフとは練習でも良い関係のなかでやれているんだ。試合に関する話もよくする。恐らく、彼にとって今の出場機会の少な い状況が喜ばしくないことは理解してる。もし自分が同じ状況だったらそう感じるだろうしね。アトレティコではセカンド・ゴールキーパーはあまり僕と会話を することはなかった。ジェラシーというよりは、苛立ちからそうなったんだろうね。あまり良い関係ではなかった。でもここでのチェフとの関係はそうではない よ。
 
 
小さい頃はよくファン・デル・サールのプレーを見て、何か盗めないかと参考にしてた。体型が似ていて僕と同じくそこまで筋肉がある方ではなかったからね。ペトルも同じように尊敬していたGKだ。彼らのようになりたいと思っていたよ。」
 
 
 
チェフはドログバ、テリー、フランク・ランパードと並んで、モウリーニョの第一期にチェルシーにおいて強烈な影響を与 えた中核選手の一人だ。そして今、新たなモウリーニョのチームはエデン・アザール、オスカーの持つ類稀なる才能、イヴァノビッチのチャンスメイク能力、堅 固なクルトワの守備を中心に進化を遂げている。
 
そしてクルトワは、フィジカルの接触が頻繁なこのリーグで生きていくためにも、チェルシーの最終ラインに口うるさく注文をつけるべきだと考えている。ベルギーの強健なディフェンダー相手に臆することなく注文をつけたように、必要となれば、声を荒げて守備を統率する。

「代表ではコンパニーが絶対的なリーダーなんだけど、親善試 合のアイスランド戦では彼はいなかった。彼に代わってチーム全体の責任を負うというわけじゃなかったけど、少なくとも僕にはゴールを守る責任がある。これ までのキャリアでトロフィーを獲得し、CL決勝の舞台も体験してきた。レアル・マドリードバルセロナ相手に場数だって踏んできた。それなりの発言の権利 はあると思う。

自分の事をリーダーだと言っているわけじゃないよ。ただチー ムを良くするためには言葉をかけることだって必要だ。チェルシーではJTという偉大なリーダーがいる。ドログバだってその一人だ。ドレッシングルームでは 彼らが声を荒げてチームを鼓舞する立ち回りを担っている。いずれ彼らがいなくなってしまったら誰かがその立ち回りを受け継ぐんだろうね。僕はただこのクラ ブの新入りさ。」

 

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以上、クルトワのインタブーでした。なんだか良い意味で生意 気(悪い意味で生意気になっちゃう時もあるかもしれないけど)っていう印象を受けました。でなければ22歳にしてチェルシーの正ゴールキーパーなんてこな せないんでしょうね。JTに躊躇うことなく声を荒げることの出来る22歳。これから先何年にも渡って、チェルシーゴールマウスに君臨してくれるでしょ う。